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【上級者向け】秋の田子でサクラダイのオスの大群を狙え!

海のレポート

秋といえばベストシーズンを迎える伊豆半島の海。
透明度も上がってきて、魚影も濃ければ、マクロ生物も豊富な時期です。

各地であんなレア生物が出た!
神子元ではハンマーが大当たり!
透明度抜群!

などなど心が躍るような情報が飛び交います。
そんな、どこを潜っても面白い秋の伊豆半島で……
僕にはどうしても忘れられない光景があります。

それは、今から2年前のこと。
2019年の10月に田子の「フト根」で見た、サクラダイのオスの群れです。
100匹以上の大群に衝撃を受けました。
それ時に撮影したのが、この写真です。

田子のサクラダイのオスは、普段は水深50mほどの深場にいるのですが、秋の時期になると産卵のために深場から、ダイビングで行けるギリギリの深度40mまで上がってくることがあります。

いつも同じ場所にいるわけではなく、潮流や時間帯など様々な要因が絡み合って集まるときもあれば散り散りのことも。
実は、1回のダイビングで大きな群れに当たる確率はかなり低い。
しかも水深が40mの何度も行ける場所ではない上に潮が速くて、そのエリアまで行けないこともあります。

ここは、「フト根」の中でも限られた人しか行けない上級者向けのエリアなんです!
(※田子自体は初心者から楽しめるスポットです)

ちなみに、今回お世話になった田子ダイビングセンターのガイドのさゆりさん曰く
「サクラダイが群れる光景が見られるエリアに行くには、ダイバーのスキルが問われます。初日の方を連れて行くのは難しいため、何度か潜ってスキルや海況を確認しながらになりますね。また人数の少ない平日がオススメです」
とのことでした。

今年の秋は僕も何度もトライしては見れたり見れなかったりしたりしてきたので、最新の写真と共にその様子をご紹介していきます!

田子名物!サクラダイのオスの群れ

田子でサクラダイのオスが群れ始めるのは、毎年8月の終わりから10月中盤くらいまで。
この時期になると各地から上級者のダイバーがこのサクラダイの群れを求めて田子の海に集まってきます。

サクラダイは最近では台湾など発見されていますが、ほぼ日本でしか見られないと言って良く、その中でも伊豆エリアに数が多い魚です。
伊東や熱海、大瀬崎なんかもサクラダイが多いことで知られています。

なのでこのサクラダイの群れは伊豆ならではの被写体と言っていいと思います!
ただ一筋縄ではいかないのが伊豆のワイド撮影です。

良い時だけじゃなく悪い時もある。
せっかくサクラダイが群れていても、透明度が悪い日があることもあります。
そんな日の深場は暗い海の底のような時も。

逆に透明度も良くて穏やかな海でもオスが群れていないこともあります。

タイミングは毎回違うのですが個人的には午後よりも午前中のほうが固まっていることが多い気がします。
午後は産卵行動を見ることが多く、産卵が始まってしまうとオスはばらけてメスとペアになってしまうので固まりを見ることが少なくなります。

田子のサクラダイを見るには、まず自分のスキルがあること、チームの人数が少ないこと、海況が良いこと、そして群れていること。
これだけの条件が揃わないと見ることができない……
そのぶんだけオスの大きな群れを見れた時の喜びはひとしおです。

今年は2年前ほどの大きな群れには当たることはありませんでしたが、それでも他エリアに比べたら多いサクラダイに圧倒されました!!
来年も僕は秋になると暇を見つけては田子に通うような日々になりそうです。
密かにこの田子の写真で海外のフォトコンに出したいな、なんて個人的に画策中。

ちなみにオスがこれだけいるってことはサクラダイのメスの群れも本当にすごい!
オスよりは浅い深度で群れていて、さらには比較的いつでも群れているので、まずはメスから狙うのがオススメですね!
このメスも流れがある時などにぎゅっと固まる様子は、なかなか他のエリアにはない華やかな景色です。

まだまだ魅力的なディープな田子の魅力

ここも水深40mと誰もが行ける場所ではないのですが、深場にはまだまだ魅力的な光景がたくさんあります。

例えば上の写真のような両側からソフトコーラルが生えた谷のような地形。
この谷にもスズメダイ系や時にはテンジクダイ系など、いろんな魚が隠れていてすごく華やかな場所。
ハナダイを狙わなくてもこの景色だけでも十分魅力的です。

今年は深場にヒゲダイも居着いていました。
田子はソフトコーラルもすごく豊かなポイントで、ヒゲダイとソフトコーラルなんて贅沢な写真も撮れちゃいます。
ソフトコーラルが満開の日なんかは海底がオレンジや黄色、ピンクと本当に色彩に溢れて最高なんです。

他にも、こんな巨大なナンヨウキサンゴも!
このキサンゴは田子のメインのポイントで今回サクラダイ狙いで潜っている「フト根」のシンボル的な存在。

日本国内ではここまでの大きさのナンヨウキサンゴはなかなか見たことありません。
ナンヨウキサンゴは魚たちの隠れ家にもなるためハナダイやいろんな魚が集まっていて賑やかな場所です。

もちろん初心者でも楽しめる!

ここまで田子「フト根」の少しディープな上級者向けの情報ばかりお伝えしてしまいましたが……
フト根は本来は魚影とキンギョハナダイを楽しむポイントです!
エントリーポイントにはブイが設置してあり、ロープ潜降ができる上に根のトップの8mくらいからすぐに写真のようなキンギョハナダイの群れに囲まれます。

そして少し流れに逆らって流れの先に行くとイサキやタカベなどの魚影がとにかく濃い!
西伊豆屈指の魚影ポイントで間違いありません!

特に秋口はカンパチなどの回遊魚もよく回ってくるので、捕食シーンやダイナミックな魚の群れの動きを楽しむことができます。
そしてなんと今年はハンマーの当たり年で、僕も3度ほどハンマーを見ています。
ジンベエやマンタも出たりと、最後の最後まで気の抜けない海です。

田子の面白さはバリエーションの豊かさ

田子の面白さは外洋ポイントだけじゃありません!

ここまで紹介したサクラダイが舞い、キンギョハナダイが乱舞する「フト根」から、まるで湖のように穏やかな湾内のポイントまであります。
この湾内の「白崎」というポイントには伊豆では最大のミドリイシサンゴの群生があり、一面サンゴだらけの光景を見ることができます。
このサンゴエリアには多くのスズメダイ類やヤッコ類の幼魚が隠れていて、マクロもすごく面白いんです。

今回も伊豆では珍しいゴマハギに出会えました!
白崎では大きなオオモンカエルアンコウや冬になるとウミウシも増え、他の伊豆のポイントに引けを取らないほど、生き物の豊富なポイントです。

他にも同じ湾内に「弁天島」というポイントもあり、こちらはネジリンボウがいたり、白い砂地があります。
そこでのハゼ探しや甲殻類、そして今年はナンヨウハギが浅瀬で見れていて、「弁天島」もマクロ好きのダイバーにはたまらないポイントです。

他にもこんな地形ポイントがあるのも特徴的です!
ここは「三ノ浦」という外洋の沿岸にあるポイント!
最大深度が10mを切るので初心者から本格的な地形を楽しめるのが魅力的です。

暗がりにはハタンポが群れていて、ダイバーに合わせて揺れ動くハタンポは本当に幻想的です。
洞窟の入り口が西側を向いているので太陽が傾きかけてきた夕方まで明るく、2ダイブ別のポイントに潜った後に最後は浅い地形でまったりと潜るなんてのにもいいですね!

おわりに

初心者から上級者まで楽しめる田子の海。

僕はもちろん、その海の魅力も好きですが……
どこかのどかな田子の雰囲気もすごく好きです。

特に田子がある西伊豆町は夕日の町として有名で、駿河湾に沈む夕日をのんびり眺めながら過ごす。
そんな贅沢な時間も良いでしょう。

もし田子で1泊2日の泊まりダイビングを計画するなら、個人的には「夕日の宿よしだ」さんがおすすめです。
目の前から上の写真の景色が見られるのはもちろん、1泊2食8500円とは思えないほどの豪華な夕食が本当に美味しいんです。

ぜひ皆さんも西伊豆に滞在しながら、田子の海潜りに行ってみて下さい。

取材協力:田子ダイビングセンター

■CHECK!■
今回ご紹介した田子でのダイビングについては、茂野優太さんのブログ&Youtubeでも紹介されています。合わせて、お楽しみください。

しげのゆうたの旅ブログ:魚影抜群!田子のダイビングは魚も心も踊る一生忘れられない経験に!

茂野優太

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Under Water Creator。 1991年、神奈川県生まれ。 海・ダイビングの魅力を写真、映像、文章、ガイドなど、多様なアプローチで発信する。 伊...

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