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日常が美しい奄美大島の海!優しい海に甘える幸せ

海のレポート

​​僕は、奄美大島に向かった。

奄美大島といえば、2021年に世界自然遺産に登録されたことも記憶に新しいだろう。
海底にミステリーサークルを作るアマミホシゾラフグや、ここ数年は冬のホエールスイムが人気を博している海だ。

しかし、今回の記事にザトウクジラやアマミホシゾラフグの話は一切出てこない。
では、何をお話しするのかというと、奄美大島北部の海で見つけた、小さな幸せ広がる水中の光景だ。

僕が感じた奄美大島の日常の海。
きっと昔からこの美しさが広がっていていたのだろう。
そして、これからも続いていくだろう美しさを紹介していけたらと思う。

ダイバー憧れの癒しの光景の中で潜る

デバスズメダイ

今回お世話になったダイビングショップは、奄美大島の北部エリア(空港から車で約15分)にあるネバーランドです。

ネバーランドがボートダイビングのベースとしているのは、笠利湾という東シナ海側に大きく開いた湾内のエリア。
多くのダイビングポイントは流れもあまりなく、深度も浅く、透明度も高いため、非常に穏やかで美しい光景の中でダイビングをすることができます。

上の写真はオアシスというダイビングポイントで撮ったものなのですが、水深6〜8m前後の真っ白な砂地にオアシスのようなサンゴの塊がポツンと2ヶ所あり、そこにたくさんのデバスズメダイやスカシテンジクダイが群れていました。

デバスズメダイ

この光景は阿嘉島のニシバマというポイントが有名ですが、このオアシスというポイントも引けを取らないくらい本当に美しい。
ずっと、ここにいたくなるような幸せな空間。
まさに心が明るくなるようなポイントで、撮影をする手を止めて……この空間を楽しんでしまいました。

確かに僕は撮影するのが仕事ですが、ダイビング自体を楽しむ。
海自体を楽しみ、感じ、そして海に甘える。

そんな感覚を思い出させてくれる場所でした。

フタスジリュウキュウスズメダイ

そして小さな生き物へと目を向けても楽しいんです。
デバスズメダイの群れの中にはフタスジリュウキュウスズメダイやキンギョハナダイ、ヨスジフエダイといった、普通種とはいえ可愛らしい魚が一生懸命暮らしている姿を見ることができます。

こういう生き物の世界にお邪魔させてもらって、写真を撮らせてもらう。
それだけで、なんて贅沢なことなんでしょう。

ひとしきり、この光景に夢中になっていると、ネバーランドのオーナーちょっくんこと古田さんが、スレートに何かを書いています。
なんだろうなぁと覗いてみると、デバスズメダイの婚姻色や産卵している個体を紹介してくれていました。

デバスズメダイのオスが岩肌のメスが産んだ卵に精子をかけている様子

ただ、いるだけで癒されるこの海なのに……。
ちょっくんは生き物にも詳しく生き物愛にあふれたガイドなので、ただ魚を見せるだけじゃなくて、その生態行動や特徴をとらえて紹介してくれます。

だから奄美の海が、そしてその生き物がすごい好きになるんです。

アカヒメジ

他にもアカヒメジやヨスジフエダイやノコギリダイといった南の島っぽい魚たちが優雅に群れて泳いでいるポイントもあります。

この写真も白い砂がキレイなところで紹介してくれました。

もちろん奄美の海もサンゴ礁が非常に美しい。
今年は8月中に台風が少なく、高水温が続いたためサンゴが白化してしまっているが、9月の台風で水温が下がり、元に戻ってきているそうです。

サンゴの白化は自然に取って好ましいことではないが、その色合いの美しさに見惚れてしまうところはありました。

奄美は1種類のサンゴが群生しているというよりかは、いろんなサンゴが折り重なっているところも多く、そんな多様な感じも僕の好きな海でした。

アオウミガメ

他にも奄美大島の北部ではタートルロックビーチというポイントでアオウミガメに出会うことができます。
浅いリーフ内のポイントなので海が非常に穏やかで深度も浅く、スノーケルや体験ポイントにもなっていますが、フォト派ダイバーも楽しめるでしょう。

この写真の水深は1m以浅と、こんなに浅い深度でアオウミガメを観察できる場所は他にないんじゃないでしょうか?

ネバーランドオーナーちょっくんとアオウミガメ
ネバーランドオーナーちょっくんとアオウミガメ

ここのアオウミガメはポイントと使い始めた頃は全然人に慣れていなかったそうですが、長い年月をかけて優しくアプローチをして、人に慣れていったという。
ネバーランドらしい優しい生き物との距離感です。

僕がアオウミガメの撮影に夢中になっていると、後ろからちょっくんが回り込んできて1枚。
邪魔するでもなく、ずっと撮影を見守ってくれて、一息つこうかなという絶妙なタイミングで入ってきてくれたり、ふざけるから、僕も釣られて笑いながらシャッターを切りました。

体験ダイビングやスノーケリングのゲストだったら、こうやって写真撮ってもらえたら、すごい思い出に残りますね〜!

自分だけのお気に入りの色を探すマクロ

キンギョハナダイ

奄美大島には本当に幸せな色が溢れているんです。

穏やかな白砂の湾内はとにかく海の中が明るく美しい。
そんな中から自分の好きな景色を見つけてニヤニヤしながら撮影をする。

ゆったり潜れる海だから、あーでもない、こーでもないとか考えながら被写体と向き合って、自分らしい色や世界が表現できた時、本当に幸せな気持ちになります。

オキナワベニハゼ

複雑に入り組んだ笠利湾の中にはさまざまな生物たちが住んでいて、さまざまな環境が広がっています。

だから普段いる普通の魚を見てても楽しいし、じっくり観察することができるんです。

タテジマヘビギンポ

こんな青いホヤを眺める位置がお気に入りのタテジマヘビギンポや、

カンザシヤドカリ

白化して薄い紫色になったサンゴに隠れるカンザシヤドカリも!
こんなに素敵なシチュエーションがたくさんあるんです。

そんなのはシゲちゃんだから見つけられるんでしょ〜と思う方も多いかもですが……
ほとんどガイドをしてくれたちょっくんが次から次へと、「これ優太色」「こんな色どう〜?」ってたくさん紹介してくれるので、いっぱい優しいシチュエーションに出会えます。

そんなシーンを写真で表現できるとうれしくなるし、自分で見つけられたりしても嬉しいですね。

ハマクマノミ

他にも今年はイソギンチャクもサンゴと同じく白化しており淡いオレンジ色や黄色、ブルー、紫といった驚くような色合いになっています。

ちょっくんは、この色がアメイジングだからということでアメイジングイソギンチャクと呼んでいますが、本当にその通り。
こんな色鮮やかな家に住むクマノミの仲間たちが可愛すぎてたまらない。

ハナビラクマノミ

同じイソギンチャクとクマノミでも、ここは青抜きできるシチュエーションだよ!
とかそれぞれ細かい情報まで教えてくれるので、すごくイメージ湧きやすいし、楽しい。

アメイジングイソギンチャクは白化現象なので良いことではないかもしれない。
だけど、今は色が戻りつつあります。

自然を傷つけるわけでなければ、このひとときを楽しんでもいいかもしれないですね。

ちょっと変わった生き物たちも

マスイダテハゼ

笠利湾の中には砂泥のポイントが多いのも個人的にはすごく好きでした!

そこにいるちょっと変わったハゼも教えてくれるので楽しいんです。
例えば上の写真はマスイダテハゼという魚。
パッと見は完全に普通のダテハゼなんですが、茶色の帯の感覚が広かったり、背鰭に点があることで判別できます。

ちょっとマニアックだけど、ハゼ好きにはたまらない。

シマオリハゼ

他にも泥地ならではのハゼもたくさん紹介してもらいましたが、個人的にはシマオリハゼもすごい好きでした!
小さい個体から大きいペアまで。

他にもポイントを変えれば、ギンガハゼもいたり、共生ハゼ好きにはたまらない気がします。
と、こんなことばかり書いていると、読むの止めちゃう人もいそうなので、路線を戻して定番人気種を!

ヒレナガネジリンボウ

まずはヒレナガネジリンボウも大小たくさん!
しかも奄美の白砂と明るい海がすごく写真撮りやすいし、寄れるんです!

ヤシャハゼ

すぐ横にはヤシャハゼも!
ハゼが多いエリアに連れてってもらえば、自分でも周りを見渡すと1匹くらい見つかるし、ちょっくんが共生ハゼを見つけるコツもブリーフィングで教えてくれます。

バイオレットボクサーシュリンプ

ちょっとまた、マニアックになってしまいますが……
奄美大島といえば通称)バイオレットボクサーシュリンプや、

シロボシアカモエビ

ホワイトソックス(シロボシアカモエビ)を安定して狙ってみれることも嬉しいです!

クリーナーシュリンプがたくさんいるアザハタの根があり、エビカニ好きの人には天国のような場所ですし、他にもいろいろいるので楽しめると思います!

特にこのバイオレットボクサーシュリンプとホワイトソックスは柄も派手ですし、色合いから人気の2種です!

ウサギモウミウシ

今回はあまりウミウシは狙いませんでしたが、こんな可愛らしいウサギモウミウシも見てきました!

内湾性の砂泥質の砂地にはコテングノハウチワが生えていて、そこにモウミウシの仲間が付いています。
大きさは5mmくらいと、めちゃくちゃ小さいですが、その可愛さから夢中になるダイバーも多いんです。

センネンダイ

他にもちょっくんが普段はあまり行かないけどと、連れて行ってくれたセンネンダイが見れるポイントにも潜ってきました!
センネンダイも他エリアじゃなかなか狙ってみれる生き物じゃないから、僕自身初めて見れて、めちゃくちゃ嬉しかった。

メナガガザミ

他にもセンネンダイを見たポイントの帰り道、こんな目ん玉が飛び出したビックリガニにも出会いました!
16年奄美の海でガイドしているちょっくんも初めて見たという。

たぶん砂に潜っている時は、この目がすごい有効なんだろうけど、砂から出てしまうと、めちゃくちゃ滑稽なカニ!
みんなで「なんだこれ〜」なんて言いながら撮影して、ログ付の時に調べてメナガガザミというカニだということがわかりました。

こういうちょっと変わった出会いがあるのも奄美大島の面白さなのかもしれないですね。

サンセットでニシキテグリの産卵を狙う

ニシキテグリ

奄美大島はサンセットダイビングも面白い!
春や秋の時期はハナダイの産卵、5〜9月はニシキテグリの産卵もサンセットで狙えるという。
僕が訪れた9月末は時期的には少し遅いものの可能性はゼロではないから、狙いに行くことに。

日没の少し前にポイントに入り、明るいうちにニシキテグリの行動を観察したり、撮影したりして、夕暮れの時間になると産卵開始。
事前に動きや注意点をかなり詳しくブリーフィングしてくれるので、観察してても楽しいし、こんなダイビングもあるんだと、サンセットダイブ初心者にも楽しみやすいと思います。

ニシキテグリのオスとメスがペアになる様子

こんな感じにオスとメスがペアになってサンゴの隙間から出て産卵をします。

思ったより、ゆっくりと上昇していくので、肉眼だったら全然見られるし、撮影もまだ可能な範囲なので非常に楽しい!

ニシキテグリの産卵の瞬間

ちょっと後ろ向きにはなってしまいましたが、うまく撮影できると、こんな風にメスの卵まで写真でハッキリ写すことができます!

このニシキテグリの産卵行動は、ビーチポイントの水深3〜4mで見られます。
ぜひ夏の時期に奄美に潜りに来られる方はやってみて欲しいです。

僕も次はいい時期にリベンジしに行きたい!

独特の感性が光るガイディング

ブリーフィングをするちょっくん

ちょっくんのガイドは本当に独特の感性で生き物を紹介してくれる。
だからこそ、普段自分では気付かなかった感性や視点で海を見ることができるんです。

まるで、1本のダイビングという作品を魅せてもらっているような気がしています。
水中では、「こんな奄美の海どう?面白いでしょ」って問いかけられているような。

カクレクマノミ

例えば、僕はアメイジングイソギンチャクで見つけたカクレクマノミを単純にどうやったら可愛く撮れるかなって撮影をしていたのですが……
ちょっくんは横に来てスレートに「目が特徴的、写輪眼カカシ先生」って書いているんです。

よく見ると昔流行ったNARUTOという漫画のキャラクターの目に似ているんです。
そんな視点ある!?と思ったら、次は……

こんな体に白の斑点模様のヤマブキベラを見て、北斗の拳と表現していたり、そんなとこまで生き物見てるんだと感動しました。

小さなことですが、そうやって生き物を紹介してくれると、いつも見ている生き物がぐっと印象的に感じます。
他にもいろいろあるんですが、まあそこは潜りに行ってのお楽しみということで。

なぜかゲストに僕とサンゴを紹介していたちょっくん。
なぜかゲストに僕とサンゴを紹介していたちょっくん。

この独特の雰囲気を持つ奄美大島の北部というフィールドで、ゆったり自由に潜れるからこそ感じることのできる魅力。
そして珍しい生き物だけじゃなくて、普通の生き物も面白おかしく印象的に紹介してくれるガイドのメンバー!

今回僕はちょっくんと全ダイビングを一緒に潜りましたが、他のガイドの方々もすごい優しいし、一緒に船に乗っている時間も楽しく過ごさせてもらいました。

ネバーランドというショップの名前には「スタッフにとっても、ゲストにとっても夢のように楽しい場所に」という意味が込められているそうです。
まさに僕も4日間取材させて頂いて、本当に笑いが絶えなくて、帰る時はすごく寂しい気持ちになってしまうほど。

僕自身撮影しながら本気で海と向き合ってはいるんですが、ついつい笑ってしまう。
いつもより子どものように、はしゃいでしまう。

そんな日々でした。

南国の海というと、ついつい沖縄の海ばかりを選んでしまうイメージがありますが、奄美大島の海、本当に美しいですよ。
ぜひ癒されに行ってみてください。

取材協力:ネバーランド(https://www.amami-umikaze.net/

■CHECK!■

今回ご紹介した奄美大島のダイビングについては、茂野優太さんのYoutubeでも紹介されています。

合わせて、お楽しみください。

茂野優太

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Under Water Creator。 1991年、神奈川県生まれ。 海・ダイビングの魅力を写真、映像、文章、ガイドなど、多様なアプローチで発信する。 伊...

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