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宮城県女川、宝の海で“良い海”を思う。〜サケの遡上と冬の生き物たち〜

海のレポート

「沖縄のような綺麗な海だけが、良い海ではない」

これは以前、宮城県女川でダイビングショップを営むハイブリッジのオーナー・高橋正祥さんと話した時に聞いた言葉です。

高橋さんがホームグラウンドとする女川の海は、ダイバー以外の目線から見ても良い海だということを語ってくれました。
そしてこの言葉は、なんとなくずっと胸に残っていました。

2022年11月。
今回、初めて女川町の海に訪れて潜ってみたところ、改めてその言葉に納得がいったのです。

今やまちの顔とも言える商店街のシーパルピア女川は、東日本大震災後の復興後できた施設で、様々な商業施設が立ち並ぶほか、地元市場のハマテラスには、新鮮な秋刀魚やホタテ、魚介類が並びます。

シーパルピア女川を筆頭にオシャレな雰囲気の駅周辺には宿泊施設や温泉もあり、そのエリアでなんでも揃う、魅力が満載の場所です。

新鮮な魚介類が並ぶ
新鮮な魚介類が並ぶ

シーパルピア女川内にあるのがダイビングショップのハイブリッジさんです。
震災後に始めたお店は10年が過ぎ、高橋さんはこの10年でこの海がわかってきたと語ってくれました。

震災後のことや海のこと。
一つ一つの言葉に重みを感じながらお話しました。

今回はそんな女川町の海と川を皆さんにご紹介していきます。

サケの遡上

宮城を訪れた目的の1つはサケの遡上の撮影でした。
数年前も岩手でサケの遡上を撮影したのですが、写真を見直すと足りないカットが多いなぁと思い撮影に来たのです。

川はお店からすぐ近くにあり、上からサケの姿も確認できるほどです。
元気なサケもいれば、もう弱ってそろそろ力尽きるであろうサケも見かけました。

サケは生まれて2~4年をかけてアラスカ湾まで数千キロを回遊すると言われています。
そして、大きくなり生まれた川に戻るのです。

そんなサケが最後に遡上してくるシーンを見るのは心に響くものがあります。

サケ
サケの遡上

良い海とは

さらにもう1つ狙いたい生き物がありました。
それがマボヤの群生です。
単体のマボヤは日本海側で過去に撮影をしていたのですが、群生を見たことがなかったのです。

ある生き物の書籍の一コマにマボヤの群生があり、このシーンはいつか狙いたいなぁと思っていたのでした。

お店から車で10分ぐらいのところに竹浦漁港があり、そこから船で数分でダイビングポイントにつきます。

高橋さんから、「マボヤはそこらじゅうにいますよ!」と教えてもらい、いざエントリーして海中を見渡すと、すごい光景を目にすることになったのです。

岩の上にはマボヤの群生が広がり、さらにキタムラサキウニやアワビ、マナマコなど海産物だらけ。

宝の海だーー。

この光景を見ながら、「沖縄のような綺麗な海だけが、良い海ではない」という先ほどの高橋さんの言葉を思い出しました。

もしかしたら、多くのダイバーが思い描く美しい光景とは異なるかもしれない。
けれど、良し悪しや美醜の受け取り方は、人それぞれだと思いますし、私は「良い海とはこういう海なんだ」と思いました。

そして、ここはダイバーだけでなく、漁師さんにとってもいい海ということ。
まさに、宝の海だと。
同時に、この海にダイバーが潜らせてもらえる幸せも感じました。

マボヤだらけ
マボヤだらけ
キタムラサキウニ
キタムラサキウニ

クジメが卵を持っていますよ!と教えてもらいました。
聞いたときはクジメなら兵庫の舞子浜や神奈川県の城ヶ島でも見ていたので、そこまで興味をそそられませんでした。

しかし、実際に見て見ると、今まで見たクジメと違い、大きさが明らかに一回り大きいのです。
最初は「えっ!?小さなアイナメじゃないよな?」と別種の魚に思えてしまうほどでした。

クジメと卵
クジメと卵

定番の生き物はやはりダンゴウオ。
なんと1年中観察することができるのです。

ダンゴウオ自体は各地で観察していたので、当初はダンゴウオもそこまでは興味をそそられていませんでした。

そんな中ダンゴウオを撮影をしていると、私の気持ちにも変化が現れました。
岩の上に出ている個体が多く撮影しやすいなと感じたのです。

さらに個体数が多いことに気付きました。

ガイドの高橋さんが、撮影が終わると次の個体を見つけて呼んでくれました。
そしてまた、撮影が終わるとすぐにこっちにもいますよ!と手招きしてくれたのです。
その繰り返しが何度も続きました。

ダンゴウオの多さに恐れ入ったという感じでした。

ダンゴウオ
ダンゴウオ
ダンゴウオ

初めて見る魚もとても多く、キツネメバルや桃色の体色をしたサラサカジカなど新鮮な気持ちで撮影できる生き物が沢山いました。

中でもフサギンポはギンポとは思えないくらい異常なほどの大きさなのです。
穴の中からこちらを見ていましたが、迫力があります。

フサギンポ
フサギンポ
サラサカジカ
サラサカジカ

また、後ろを向いて隠れてしまっていましたが、クチバシカジカも観察できました。
宮城県・岩手県、そしてカナダでしか見ることのできないとても珍しい生き物なのです。
さらにこれからの季節、真冬になればクチバシカジカが卵を持つとのことです。

クチバシカジカ(撮影:ハイブリッジ・高橋)
クチバシカジカの卵保護(撮影:ハイブリッジ・高橋)

ダイビング以外でも楽しめる宮城県

夜は秋刀魚やマボヤをいただきました。
女川は一時期、秋刀魚の水揚げ日本一を誇った有名な場所。

秋といえば秋刀魚
秋といえば秋刀魚

ホヤの中に鶏卵を入れて特製の出汁で煮込んだホヤ卵は地元では人気の料理です。
関東では見かけない美味しい料理が多々あります。

ホヤ卵
ホヤ卵

宮城県は陸上も美しい場所が多く、松島から見られる景色も最高です。
車移動の道中で立ち寄ってもいいかもしれません。

宮島
松島

今回、川と海の撮影は2日間で終わりましたが、常に新しい刺激がある場所で全く日数が足りなかったです。
美しいだけとは限らない、良い海という言葉を感じとれる海であり、また伺いたい海だなと感じたのでした。

撮影協力:宮城ダイビングサービス ハイブリッジ(​https://high-bridge1.com/​)

堀口和重

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水中カメラマン。 1986年東京生まれ。 日本の海を中心に、水中生物のおもしろい姿や生態、海と人との関わりをテーマに撮影活動を続けている。撮影の際は、海や生...

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