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静と動の久米島。生物観察で“見るから観る”ダイビングへ

海のレポート

球美の島、久米島。
海と人をつなぐガイドが、その先の感動へと誘う海。
生命の営みに目を細めながら、見るから観るへ。
この海に潜ると、また1つ海の楽しみ方の幅が広がる。

モンツキカエルウオ

こんにちは。
Under Water Creatorの茂野です。

久米島の海はとにかく華やか。
青く澄んだ海にたくさんの生き物が息づいていて、ただ漂うだけでも心動く瞬間が盛り沢山です。

だけど、もう一歩踏み込むことで、ダイビングがぐっと面白くなるし、潜ること自体も楽しくなる!

見るから観るへーー。

ただ紹介された生き物を“見る”だけでなく、その生き物がそこにいる理由、繁殖や捕食などの生態行動を知ったうえで意識的に“観る”とダイビングはもっと楽しくなるし、その生き物に愛着が湧くでしょう。

50本とか100本くらい潜ると、ある程度自分で潜れるようになり、もっともっとダイビングの魅力を知りたくなってくる方が多いんじゃないでしょうか?
そんな方には、ぜひ生物観察をおすすめしたいです。

生物観察というと、

ちょっと自分とは程遠い?
マニアックなんじゃない??

と思っている方も多いと思います。
確かに、そういう一面もあるのは否定しません。
壁……みたいなものを感じている人もいるかもしれません。

けれど、そんな時こそ力になってくれるのが、ガイド陣です。
今回は、久米島のダイビングショップ・DIVE ESTIVANT (ダイブ エスティバン)にお世話になりましたが、生物観察にもう一歩踏み込ませてくれるガイディングを体感しました。

エスティバンはガイド会会長の川本さんがオーナーで、僕と同世代の健太朗さんがチーフを務める久米島の老舗ダイビングショップです。

本当に深く久米島の海を生物を知り尽くしたガイド陣が、初心者にもわかりやすく、生き物の行動の理由や観察の仕方をさりげなく教えてくれるんです。
そして、水中写真を撮る人には撮影のサポートまでしてくれます。

久米島の海に潜りながら僕は、新たな海の見方、そしてダイビングの楽しみ方を教えてもらった気がしています。

今回の記事では、久米島の魅力と合わせて、生き物について知ることの楽しさをご紹介できたらと思います!

静と動が混在する久米島の海

久米島ダイビング

久米島の海は古来から、琉球一美しいことを意味する“球美の島”と呼ばれてきました。

島の周りには美しいリーフが広がり、すぐに外洋に繋がるダイナミックなドロップオフ。
そして、透明度の高い日には50m先が見えるという青の世界。

癒しの光景とワイルドさが混在する、静と動を合わせ持った海です。

リュウグウのアカネハナゴイの群れ
リュウグウのアカネハナゴイの群れ

久米島のダイビングポイントはドロップオフになっているところが多く、そこにはアカネハナゴイやカスミチョウチョウウオといった華やかな魚たちが群れをなしています。

イマズニのリュウキュウイソバナの群生
イマズニのリュウキュウイソバナの群生

鮮やかな魚が舞う光景に竜宮城を思わせるような大きなリュウキュウイソバナの群生が華を添えます。

久米島の優しい華やかさは僕らダイバーの心も明るくしてくれる。
この海に潜ると晴れやかな気分になるんです。

ただ、そんな優しい久米島の華やかさとはまた違う、ワイルドな一面も見逃してはいけません。

トンバラのカスミアジとロウニンアジの群れ
トンバラのカスミアジとロウニンアジの群れ

久米島で人気のダイビングポイントといえばトンバラ。
島の一番南にあり、潮あたりも抜群!
大物との遭遇率が高く、ワイルドな光景が広がっています。

トンバラをドローンで撮影した写真
トンバラをドローンで撮影した写真

冬はハンマーヘッドシャークの群れが出たり、夏にはジンベエザメが出ることもあるという、何が起こるかわからないダイビングポイントです。

久米島のギンガメアジ
久米島のイソマグロ

僕もイソマグロやギンガメアジの大きな群れと出会うことができました。

このポイントに潜ると、いままでの華やかな気分とはまた別のアドレナリンが出るんです。
男心をくすぐられるダイビングを楽しむことができるんですね。

久米島のマンタ

また、久米島ではマンタのクリーニングステーションが発見されて以来、シーズンを問わず高確率でマンタに遭遇することができます。

しかも、エスティバンではただマンタを見るだけでなく、マンタの行動の理由や動きを丁寧に解説してくれるんです。

ブリーフィングする川本氏

ダイビング前にはブリーフィングで図鑑や写真を使って、生き物の細かい生態を教えてくれるので、潜る前からワクワクが止まらないんです。

水中でその生き物に会えた時には、ついついブリーフィングで聞いたことを確認してみたくなり、その通りのシチュエーションになった時にはすごく嬉しく感じます!

リュウグウの水深30mにあるマツカサの館という名前の横穴
リュウグウの水深30mにあるマツカサの館という名前の横穴

例えば地形ポイントのマツカサの館というアカマツカサの仲間が多く住む横穴に潜る時も、じつはアカマツカサではなくてベニマツカサが多いということ。

そしてその見分け方や違いを丁寧に解説してくれます。
なので、ついつい撮影しながらも、「この子はベニマツカサで〜」なんて気になって見てしまうんです。

モンガラカワハギが卵を守る様子
モンガラカワハギが卵を守る様子

こんなに華やかでワイルドな環境の久米島の海で、さらにダイビングの合間に生き物の行動だったり、生態シーンを混ぜて紹介してくれるのがエスティバンでのダイビング!

このモンガラカワハギが卵を守るシーンなんかもウーマガイという久米島を代表するダイビングポイントでドロップオフ沿いに群れる華やかな魚や深場のヘルフリッチを狙ったあとに見せてもらいました。
水中には僕が気付いていないだけで、たくさんの生き物が命を繋ぐ行動をしているんだな……と。

しかも生態行動でも例えば僕だったら写真を撮って面白そうな被写体を選んでくれるなど、本当に突き詰めたガイド陣が、あえてわかりやすいものを紹介してくれるからこそ、そこに深みや面白みが出てくるのでしょう。

海に入るだけで十二分に楽しめる贅沢なフィールドで、さらに魚たちの生態行動を観察できるなんて、本当に贅沢な環境です。

ここからは、僕が今回見てきた生態シーンを紹介していきます。

久米島で見た生態シーン

久米島のモンツキカエルウオ

久米島といえばモンツキカエルウオの数が多いことも特徴です。
大きな個体から小さな個体まで、さらに写真のように巣穴の奥で卵を守っている光景まで観察することができます。

他エリアでは、こんな数のモンツキカエルウオを見ることはなかなかできません。
しかも、これだけ多くのモンツキカエルウオがいるので卵を保護しているシーンも多く、初夏のシーズンにはハッチアウト(卵が孵化する瞬間)も狙えるという。

モンツキカエルウオのハッチアウト

実際に僕も、モンツキカエルウオの仔魚が大海原に飛び立つ瞬間を見ることができました。
親が体を揺らして仔魚の放出を促し、仔魚が飛び立つ様子は見ていて、応援したくなるような愛くるしさと生命の輝きを同時に感じることができます。

モンツキカエルウオが繁殖する初夏のシーズンなら高確率で案内することができると言う、感動的なシーン。

久米島のヤマブキスズメダイ

他にもよく見られる生態でいうと、ヤマブキスズメダイが枯れたムチカラマツに卵を産み守っている様子。
こういったシチュエーションでは生物の個体ごとの性格まで考えて、見せやすい子を紹介してくれるんです。
この子は性格が強いため、少しダイバーが近づいても逃げづらいそう。

一方、嫌がる生物には決して無理してアプローチし続けない。
そんな生物への優しさや愛を感じることもできます。

ソメワケヤッコの幼魚とクロスジハギの幼魚

これは生態というわけではありませんが、ソメワケヤッコの幼魚がコクテンサザナミハギの幼魚と一緒に泳いでいるところ。

これも捕食者から身を守るための生存戦略の1つで、ただ生き物を見せてくれるだけではなく、1つ1つエピソードと共に紹介してくれるから記憶に残るんです。

久米島のヒメテグリ

次はヒメテグリという魚のオスとオスがヒレを全開にしてメスを奪い合っている様子です。

時間帯によって、オス同士の喧嘩、メスへの求愛、抱卵放精と異なるシーンが紹介できると言います。

産みたてのセダカギンポの卵
産みたてのセダカギンポの卵

本当に今回の久米島滞在では僕自身、どんどん生態に興味が湧いてきて、海の見え方が変わってきました。

魚の行動を考えて海を見ると、また違って見えてくるんですね。

生命輝くトワイライトタイム!魅惑のサンセット

ニシキヤッコのナズリング
ニシキヤッコのナズリング

サンセットダイビングとはその名の通り、日没のタイミングを狙ってするダイビングのことです。
この日没前後の時間は、とにかく生き物たちの生態行動が活性化して本当に面白いんです!!

普段はサンセットダイビングをする機会など滅多にないかもしれませんが、
ぜひ久米島の海に訪れた際はチャンスもあればやってみてもらいたい!

全部を1ダイブで撮影するのは難しいですが……今回もコガネヤッコ、ナメラヤッコ、ニシキヤッコ、メガネゴンベ、ミナミゴンベの放精放卵、モンツキカエルウオのハッチアウトと次から次へと生き物の生態シーンを見ることができました。

個人的に生態観察というと、じっと何時間も待って見れるか見れないかというイメージがありました。

が、しかし。

久米島では時間帯に合わせて、次から次へと貴重なシーンを見せてくれます。

久米島のホシゴンベ

それぞれの種の産卵する時間帯や予兆に合わせて被写体を紹介してくれるので、1ダイブでたくさんの生き物の生態行動を見ることができます。

様々な生物が豊富な久米島の海と、その海を知り尽くしたガイド。
この2つが掛け合わさって成せることだと思います。

モンツキカエルウオのハッチアウト

そして、今回の取材で1番撮りたかったモンツキカエルウオのハッチアウトもサンセットダイブで狙いました!

昼間のダイビングでモンツキカエルウオの卵を確認し、その中でも今日ハッチアウトをしそうな子にあたりをつけて撮影に臨みます。

なんだか物凄く貴重なシーンに立ち合わせて頂いているようで僕まで緊張してきますが、ハッチアウトが始まった瞬間は驚きとその美しさに魅了されます。

今回は短い期間での取材でのこともあって、定番の生態をメインで撮影してきましたが、よく見れるものから珍しいものまで本当にたくさんの生き物の行動を見ることができます。

シマハギの一斉産卵

他にも、今年は力を入れているというシマハギの一斉産卵の様子も見せて頂きました。

国内での生態行動というとマクロのイメージがありますが、シマハギやサザナミハギは群れでの集団産卵!!
夕暮れ時、薄暗い海の中にエントリーすると、根を覆い尽くすようなシマハギが根を這うようにうごめいている姿は、異様な光景。

きっとこのあと、何か始まるんだろうと感じずにはいられないような、ものすごい光景なんです!

根を駆け上がるシマハギ

そして、この大きな群れが、あるタイミングで一斉に根を駆け上がり、

産卵するシマハギ

大産卵を始めます!

その壮観たる光景、そして群れの大きさ、範囲の広さに……ついシャッターを切る手を止めて全体像を見たくなるほど。
こんなワイルドな産卵の光景が日本国内で見れるなんて。

そして産卵が終わった後には水面が真っ白く濁るほど。

とにかくサンセットダイブは生命の営み、そしてその命を繋ぐ行動に溢れていて、本当に感動的な光景の連続でした!

久米島・エスティバンで潜るなら、ぜひサンセットダイブをしてもらいたいです。

久米島のカンザシヤドカリ

また初夏の時期でタイミングが合えば、ナイトでサンゴの産卵を狙うこともできます。
久米島のサンゴの産卵は八重山エリアのようにエダサンゴの一斉産卵を見られるわけではなく、コモンサンゴの産卵などが多いです。

確かにエダサンゴの産卵と比べると少し地味なところはあるのですが……
写真のようなカンザシヤドカリと紹介してくれたり、場所によってはモンツキカエルウオと一緒に撮ることができたりと生物を絡めることによって他では見れない光景を見せてくれます。

久米島で潜るともっとダイビングが好きになる

今回僕も久米島で潜って、素晴らしい光景だけでなく、生物の営み、そしてその観察の仕方、面白さを教えて頂きました。
そして、その余韻は僕のホームグラウンドの伊豆半島に戻ってきても続きました。

今までとは、海が違って見えるんです。

ヘビギンポの求愛

例えば、いつもだったら素通りする安全停止ラインの浅瀬ではヘビギンポが岩陰で求愛、産卵しているのが目に入ってきたり……

クロホシイシモチの口内保育

伊豆半島ならどこにでもいるクロホシイシモチも、口内保育と言ってオスが口の中で卵を守っているシーンが目に入ってくる。
そしてこのオスの卵はもう目が出てきてるなとか、この子はまだ咥えたての卵だなとか、そんなことが気になってくる。

それはレア種を見ても一緒です。

ジャパニーズピグミーシーホース

例えば伊豆半島では珍しいジャパニーズピグミーシーホース(ハチジョウタツ)を見た時にも、

あ、この子はお腹が大きいな!
オスが近くにいるのかも!

とか。

今までこれだけ潜ってきた海なのに、全然違った海に見えてくるんです!

新たな海の見方、そしてダイビングの楽しみ方を教えてもらったという感じなのかもしれません。

ただダイビングを楽しんだだけで新たな目線を提供してくれて、よりダイビングが好きになる。
そんな素敵な経験をさせてくれたのが、エスティバンのガイド陣です。

ぜひ、もっとダイビングを好きになりたい方や、既に生き物にある程度興味のある方は、久米島の海に潜り行ってみて下さい。

きっとハマって帰ってくるハズです!

取材協力:DIVE ESTIVANT (http://dive-estivant.com/

■CHECK!■

今回ご紹介した久米島のダイビングについては、茂野優太さんのYoutubeでも紹介されています。合わせて、お楽しみください。

茂野優太

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Under Water Creator。 1991年、神奈川県生まれ。 海・ダイビングの魅力を写真、映像、文章、ガイドなど、多様なアプローチで発信する。 伊...

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