スズキ目大解体!!魚の分類を大幅に見直しました

生物について

Scuba Monsters(以下スクモン)の「生物探し」では海の生き物を探すことができます。
これを支えているのが生物データベース(以下生物DB)。
(主に)日本で観察されたことのある生物が2025年1月時点で19395種(亜種含む)登録されています。

さて、生き物は原則的に「種」を最小単位としたうえで、属、科、目……とピラミッド式に整理されています。
以下の記事でもご説明しています。

このピラミッド式の分類は、実はとても流動的。
ある「種」がどの「属」に分類されるのか、ある「属」がどの「科」に分類されるのかは日々変化しています。
スクモンではこの変化応じてできるだけ最新情報に従う様、日々更新を行っています。

とはいえ、基本的な
界―門―綱―目―科―属―種
という分類階層のうち、「目」よりも上の階層はそう頻繁に変わる物ではありません。

しかし、鳥類(鳥綱)が近年は爬虫類(爬虫上綱)に含まれる様に上位の分類階級が変更されることも、もちろんあります。

これは、近年のDNA分析の技術が発達したことにより、より正確に”同じ祖先をもつと考えられる”ことがわかる様になり、できるだけそれに沿って分類を見直しているためと言えるでしょう。(単系統)

そして今回、スクモンの生物DBも最新情報に従って魚類の分類を見直すことにしたのですが、かなり大規模な変更となり、興味深い物でしたので、記録として残しておきたいと思います。

尚、今回取り上げている分類はスクモンの生物DBに登録があったもののみです。
また、研究者によって異なる見解も当然あります。

ちなみに……筆者の勝手な予想ですが、恐らくこの分類も近い将来、2、3年のうちには変更になる物と思われます。
また大改修しなきゃと思うとちょっとツライ……。

ざっくりとした結論

寄せ集めのスズキ目が解体され、魚の代表ではなくなった

元々スズキ目と呼ばれていた目はスズキ目という名前ではなくなる可能性が高い

カサゴ目は元々スズキ目と呼ばれていた目に取り込まれた

寄せ集めのスズキ目が解体され、魚の代表ではなくなった

これまで、スズキ目は魚類のみならず脊椎動物全体の中で最大の目とされ、乱暴に言うと、いわゆる魚の形をした種のほとんどがスズキ目に分類されていました。
しかし、実はこのスズキ目は”スズキ目以外の寄せ集め”と言っても良い様な状況だった様で、生物DBに登録のあった16亜目のうち15亜目に変更がありました。

スズキ目に残留したのはゲンゲ亜目、パーチ亜目(旧スズキ亜目)※後述、ワニギス亜目(2亜目に分割)の3亜目のみです。

亜目:目と科の間の階級。ある分類の中に小分類を作る場合にはまず”亜”をつける

元々スズキ目と呼ばれていた目はスズキ目という名前ではなくなる可能性が高い

「※後述」とした部分です。

スズキ目にはスズキが所属していたためにスズキ目と呼ばれていたわけですが、肝心のスズキがホタルジャコ目という新たな目に移動してしまいました。
したがって、スズキ目にはスズキが所属していないことになり、目の和名としてスズキ目というのは適切ではない様に思えてきます。

なぜこの様なことが起きるかというと、分類階級の学名を見てみるとわかります。

まず、元々のスズキの分類は以下の通りでした。
Perciformes(スズキ目)―Percoidei(スズキ亜目)―Lateolabracidae(スズキ科)―Lateolabrax(スズキ属)―Lateolabrax japonicus(スズキ)

ここで、パーチ(ヨーロピアンパーチ)という魚に登場してもらいます。
Perciformes(スズキ目)―Percoidei(スズキ亜目)―Percidae(パーチ科)―Percinae(パーチ亜科)―Perca(パーチ属)―Perca fluviatilis(パーチ)

属から目まで”Perc”という部分が共通していますよね。
実は、学名は分類階級によって決まった接尾辞をつけることが多い(※)ため、接尾辞以外の部分を見ると、その分類を代表する(典型的な特徴を持つ)物を追っていくことができます。

※規約で明確に定められているのは上科、科、亜科、族、亜族のみ

つまり……、
そもそもスズキはPerciformesを代表していなかった
ということです。

パーチ(ヨーロピアンパーチ)※Public domain画像

パーチ科の魚は日本には分布していません。(現在は特定外来生物)
そして、見た目はスズキに似ており、今でもパーチの訳として”スズキ”が当てられている翻訳さえあります。
Perciformesの中で日本の代表的な魚として”スズキ”という日本語訳を当てたために、この様なことが起きてしまっているのです。

しかし、スズキは日本にパーチという名がもたらされる以前から浸透している名であるはずで、これ自体は責められるものではありません。

分類階級の和名の由来である種がその分類階級から抜けてしまい、分類階級の和名が迷子になってしまうという事は、科以下ではしばしば起こる現象です。

Perciformesはこの先”パーチ科”もしくはパーチの日本語訳として尤もらしい物に変更される可能性がありますが、スクモンでは暫定的に「パーチ目(旧スズキ目)」という表現にしたいと思います。

カサゴ目は元々スズキ目と呼ばれていた目に取り込まれた

元々カサゴ目は、乱暴に言えば「ゴツっとした魚の仲間たち」でしたが、生物DBに登録のあった6亜目のうち、セミホウボウ亜目を除く全てがパーチ目(旧スズキ目)の亜目となりました。

スクモンで採用していた従来の目・亜目

ここからは更に詳しく、どの様な変更があったのかを見ていきます。
尚、軟骨魚(サメ・エイ)については、大きな変更が無かったので割愛します。

新たな分類でも変更がないもの

従来の分類がそのまま別の分類に変更となったもの

様々な変更があったもの

詳しくは後段で解説します。

チョウザメ目

ソトイワシ目

ウナギ目

シャチブリ目

トウゴロウイワシ目

ヒメ目

ガマアンコウ目

ダツ目

キンメダイ目

カンムリキンメダイ目

サンフィッシュ目

ニシン目

コイ目

カダヤシ目

カライワシ目

カワカマス目

タラ目

ウバウオ目

ネズミギス目

アカマンボウ目

アンコウ目

ハダカイワシ目

ソコギス目

アシロ目

キュウリウオ目

アロワナ目

トゲウオ目

カレイ目

ギンメダイ目

フウセンウナギ目

サケ目

ナマズ目

ワニトカゲギス目

ヨウジウオ目

フグ目

マトウダイ目

カサゴ目

セミホウボウ亜目

カジカ亜目

ギンダラ亜目

アイナメ亜目

カサゴ亜目

コチ亜目

スズキ目

ギンポ亜目

ネズッポ亜目

カジキ亜目

ハゼ亜目

ワニギス亜目

サバ亜目

イレズミコンニャクアジ亜目

ムカシクロタチ亜目

イボダイ亜目

ニザダイ亜目

ヒシダイ亜目

スズキ亜目

ボラ亜目

ゲンゲ亜目

カマス亜目

ベラ亜目

新たな分類を採用した目・亜目の詳細

従来の分類がそのまま別の分類に変更となったもの

  • スズキ目ギンポ亜目
    ギンポ目として独立
  • スズキ目ネズッポ亜目
    ネズッポ目として独立
  • スズキ目ボラ亜目
    ボラ目として独立

様々な変更があったもの

ここからは、図示した方が分かりやすいと思うので、図と共にご紹介します。
青は従来の分類、緑は新たな分類です。

  • キンメダイ目
    • イットウダイ科がイットウダイ目として独立
    • ヒカリキンメダイ科、オニキンメ科、ナカムラギンメ科、マツカサウオ科、ヒウチダイ科がヒウチダイ目として独立。
  • カンムリキンメダイ目
    • 廃止。全ての科がヒウチダイ目に編入。
  • キュウリウオ目
    • セキトリイワシ科、ハナメイワシ科がセキトリイワシ目として独立
    • ニギス科、Bathylagidae科、ソコイワシ科、デメニギス科がニギス目として独立
    • Galaxiidae科がGalaxiiformes目として独立

ここまでは比較的わかりやすいのですが……。

かなり複雑ですね。
この画像は拡大できるので、見づらい場合は拡大してみてください。

スズキ目から四方八方に矢印が伸びていることが分かると思いますが、中でもスズキ亜目から最多の本数の矢印が伸びています。

生物DBに登録があった分類階級のみを対象としているので、全世界の生物を対象にすると、もっと複雑な図になるかもしれません。

以下に念のため、文字でもご説明しておきます。

  • サンフィッシュ目
    • スズキ目スズキ亜目からタカノハダイ科、ゴンベ科、ユゴイ科、イスズミ科、イシダイ科、シマイサキ科が編入。
  • スズキ目
    ※スズキ科が離脱したため、以降はパーチ目(旧スズキ目)と表記します
    • スズキ亜目
      ※スズキ科が離脱したため、以降はパーチ亜目(旧スズキ亜目)と表記します
      • カワスズメ科がカワスズメ目として独立
      • タカサゴ科、シキシマハナダイ科、オニハタ科、アカタチ科、ハチビキ科、クロサギ科、イサキ科、フエフキダイ科、フエダイ科、キツネアマダイ科、ヒメツバメウオ科、イトヨリダイ科、キントキダイ科、ニベ科、キス科、タイ科がユーペルカ類所属不明群として独立
      • テンジクダイ科がコモリウオ目に編入(スクモンのDBには未登録だったため新設)
      • ヒメジ科がヒメジ目として独立
      • アジ科、シイラ科、コバンザメ科、スギ科がアジ目として独立
      • ホタルジャコ科、チョウセンバカマ科、ソコニシン科、ヤセムツ科、アオバダイ科、クシスミクイウオ科、スズキ科、オニガシラ科、ハタンポ科、カワビシャ科、イシナギ科、ムツ科、カワリハナダイ科、オオメハタ科がホタルジャコ目として独立
      • チョウチョウウオ科、スダレダイ科、ヒイラギ科、マツダイ科、キンチャクダイ科がニザダイ目に編入
      • アカメ科、ギンカガミ科、ツバメコノシロ科、テッポウウオ科がアジ類所属不明群に編入
      • タカサゴイシモチ科 アゴアマダイ科 タナバタウオ科 メギス科がオバレンタリア類所属不明群として独立
    • カジキ亜目
      • 新設されたアジ目に編入
    • ハゼ亜目
      • ハゼ目として独立
      • スズキ目ワニギス亜目からベラギンポ科が編入
    • ワニギス亜目
      • ベラギンポ科がハゼ目に編入
      • ワニギス科、トビギンポ科がホタルジャコ目に編入
      • クロボウズギス科がサバ目に編入
      • ホカケトラギス科、イカナゴ科がパーチ目(旧スズキ目)ホカケトラギス亜目として独立
      • トラギス科、ハタハタ科、ミシマオコゼ科がパーチ目(旧スズキ目)ミシマオコゼ亜目として独立
      • シマガツオ科、ヤエギス科、Pomatomidaeがサバ目に編入
      • Bembropidae科がパーチ目(旧スズキ目)パーチ亜目(旧スズキ亜目に)に編入
    • サバ亜目
      • サバ目として独立
    • イレズミコンニャクアジ亜目
      • サバ目に編入
    • ムカシクロタチ亜目
      • サバ目に編入
    • イボダイ亜目
      • サバ目に編入
    • ニザダイ亜目
      • ニザダイ目として独立
    • ヒシダイ亜目
      • ニザダイ目に編入
    • カマス亜目
      • アジ類所属不明群に編入
    • ベラ亜目
      • スズメダイ科、ウミタナゴ科がオバレンタリア類所属不明群に編入
      • ベラ科、ブダイ科がユーペルカ類所属不明群に編入
  • カサゴ目
    • セミホウボウ亜目
      • セミホウボウ目として独立
      • トゲウオ目からウミテング科が編入
    • カジカ亜目
      • パーチ目(旧スズキ目)に編入
    • ギンダラ亜目
      • パーチ目(旧スズキ目)カジカ亜目に編入
    • アイナメ亜目
      • パーチ目(旧スズキ目)カジカ亜目に編入
    • カサゴ亜目
      • パーチ目(旧スズキ目)に編入
    • コチ亜目
      • パーチ目(旧スズキ目)カサゴ亜目に編入
  • トゲウオ目
    • トゲウオ亜目としてパーチ目(旧スズキ目)に編入
    • ウミテング科が新設されたセミホウボウ目に編入

おわりに

今回の変更では、科以下については細かく見ていません。
したがって、最新とは異なる分類方法となってしまっている可能性もあります。
これについては、日々の更新でできるだけ追っていきたいと思います。

はじめの方で「研究者によって異なる見解も当然あります。」とした通り、身近な所だと、今回はユーペルカ類所属不明群の所属としたベラ科をベラ目とする様な分類も存在します。

日々情報が変化すること、様々な見解が存在することも面白さのひとつだと思うので、より魚に興味を持つきっかけになってくれれば嬉しい限りです。

もし、「生物探し」でおかしな点を見つけた際には、お気軽にご連絡くださいね!

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